お彼岸の意味は?おはぎを食べる理由は?
公開日: : 最終更新日:2018/10/06
「お彼岸だからお墓参り行くよ」と連れていかれた父の実家。普段より豪華なごはんが食べられることを楽しみに、暑い中、汗をだくだく流して(あるいは寒い中、背中を丸めながら)、お墓に続く坂道を登りました。子どものころの思い出です。
しかし、恥ずかしながら私、この「彼岸」の意味をつい最近まで理解していなかったのです。
お彼岸ってどういう意味?
彼岸というのは、季節の移り変わりをイメージしやすくするための呼び名のひとつで、年に2回やってきます。春分もしくは秋分+前後3日間の計7日間を彼岸と呼びます。たとえば9月23日が秋分だったら(春分・秋分は年によって日がずれます)9月20日から26日が彼岸です。
この時期には、お墓参りに行くのが日本の風習です。これは、春分と秋分に太陽がちょうど真東から昇って真西に沈むことと関係しています。
そもそも彼岸というのは仏教の言葉で、西にある悟りの世界のことをいいます。そして、日本に渡った仏教では彼岸=極楽浄土という考え方が、広く人々に受け入れられました。
もとから日本にあった太陽信仰も合わさり、ちょうど真西に太陽が沈むこの時期には、先祖のいる彼岸(極楽浄土)と私たちの生きている世界が通じやすいとなったのです。お彼岸は『お日願』とも書けるのですね。
そして、この時期に開かれる『彼岸会』(ひがんえ)という仏事の事を指して、お彼岸という事もあるのです。
有名な句、『今日彼岸 菩提の種を 蒔く日かな』という句もあり(詠み人は松尾芭蕉、与謝蕪村、などと諸説あるようです)、お彼岸に縁の深い方へのお墓参りに行く事で、菩提を弔う種を蒔くように、ご供養の気持ちを現します。
お彼岸は、昔から季節の移り変わりとともに、人々に受け入れられてきた行事といえそうです。
お彼岸におはぎを食べる理由
大きくごつごつしたおはぎを口いっぱいにほおばると、甘いあんこと少ししょっぱいおもちが融合してとっても幸せな気分になります。
個人的にはおばあちゃんが作ってくれた、大人のこぶしくらいある少し不恰好なおはぎが大好きでした。子どものころは年中食べていたので特に気にしませんでしたが、確かにお彼岸のお墓参りのときにもおはぎが出されました。
これには意味があります。おもちは、日本人にとって豊穣や子孫繁栄を象徴する大切な食べ物です。おもちの元になる米は1粒まくとその何十倍もの実をつけ、私たちの生命を支えてくれます。
また、長く伸びることから長寿を、丸い形のものは家庭円満をあらわすといわれています。お正月の鏡餅なんかは今でも縁起物として飾る習慣が根付いていますね。
また、おもちを包むあんこは小豆から作られますが、この赤色に魔よけの効果があるといわれています。これは中国の影響ですが、今でも多くの中国人にとって赤色は特別な色なのだそうです。
おはぎはいつ食べてもいいの?
おはぎを食べることで頭がいっぱいになってしまいましたが、そもそもこれはお彼岸のお供え物。いつかは食べますが、この「いつか」、実は決まっているのです。
まずはもちろん、お墓や仏壇にお供えしてご先祖さまに食べていただきます。お彼岸の初日から3日間です。そして4日目、つまり春なら春分、秋なら秋分に、私たちが残りをいただくのです。
現代では好きなときにおはぎでもお団子でもチョコレートでも食べることができますが、江戸時代まではそうはいきませんでした。甘いものはめったに食べられない高級品。おはぎのお供えは、私たちの今を作ってくれたご先祖さまへの、最大の感謝の印しなのです。
ぼたもちって何?
おはぎといえば気になるのがぼたもち。わが家では「ぼたもち」と呼んでいたので、同じあんこの和菓子を「おはぎ」と呼ぶ人はなんだかスマートに見えます(個人的な感想です…)。
おそらく使い分けている人はほとんどいないと思いますが、それで正解です。ねずみ色と灰色みたいな関係で、今ではほとんど区別なく使われています。
この2つの名称の由来には、さまざまな説があります。
もっともポピュラーなのは作る季節で分けるもの。春分に作る方は春に咲く牡丹の花にちなんで「ぼたもち(牡丹餅)」、秋分に作る方は秋に咲く萩の花にちなんで「おはぎ(御萩)」です。
さらに、こんな言葉遊びがあります。このお菓子は杵を使った本格的な餅つきをする必要がなく、静かに作れることから、夏には「いつ(餅を)ついたか分からない」→「(夜の闇で船が)いつ着いたのかわからない」→『夜船』、冬には「(餅)つきを知らない」→「(北向きでは月が見られないため)月を知らない」→『北窓』と名前を変えます。
なんと、春夏秋冬、4つの名前を持っているのです。こんな言葉遊びが生まれるのも、おはぎが長く日本人に愛されてきた証ですね。
おはぎは現代でも自宅で簡単に、静かに作ることができます。
塩を混ぜたもち米とうるち米を炊飯器で炊いて、あんこで包むだけ。彼岸花でも眺めながら心静かに作りたいものです。
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